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癸六五一二部隊。
2008.07.31 Thursday 16:48
 その星の生命体が外宇宙へと飛び立って何百年とたった頃になっても、その母星では同種同士での争いが絶えなかった。
 王族がすべての民を統治し、その民のほとんどが軍人で構成される国家、パルテ=ノルテ。宇宙でも好戦種族として名高いヴォラシダッド人の六割をこの国の出身者が占める。
 血肉を好み、相手を殺すことにかけては超一級。そして同時に、忠誠の限りを尽くし、己が従うべき人物には従順なパルテ=ノルテの民は、同星の者からも、そして他星の者からをも忌み嫌われる存在だ。

JUGEMテーマ:自作小説



癸六五一二部隊

「ドクトル・カナエンテ」
 低いバリトンの声で名を呼ばれて振り返ると、そこにはパルテ=ノルテ・テガムリア候、つまるところわたしの上官が一部の乱れもなく完璧な姿勢で立っていた。つい気を抜いていたわたしは焦って、思わず出しそうになっていた声を辛うじて引っ込めた。
 テガムリア候はこのパルテ=ノルテ国で十三人いる王族の一人で、主に軍をおまとめになっている方だ。専攻は軍事戦略と、ヴォラシダッドにおける環境。あとは詳しく覚えていないけど、捕食者に関する論文もお書きになられていたと思う。
「改める必要はないよ、ドクトル。貴方は軍人ではない」
「お言葉ですが、パルテ=ノルテ・テガムリア候。軍人でなくとも、あなた方王族に対して無礼な真似は出来ません」
 テガムリア候はいつも上等な軍服にその身を包み、腰には立派な装飾の施されているパルテ=ノルテの宝剣を帯刀されている。鋭い目つきだが、その口元には始終笑みがあり、多くの部下に好かれている良い上官だ。
 わたしはその称号が多くを語るように、軍人ではなく博士。ドクトルという称号はこのテガムリア候に頂いたものだ。彼の研究とわたしの研究の多くは違う分野だったけど、彼はわたしの功績を認め、軍人よりも上でありながら平民と同じ立場である、ドクトルという称号を与えてくださった。
 ドクトルという称号を持つ者は強制軍属されることがなく、国から研究費用をもらって自分の研究を続けることの出来る、すばらしい立場だ。
「ドクトル。折り入って頼みたいことがあるんだが、ちょっといいかな」
「何でしょう? わたしでお役に立てることでしょうか?」
 テガムリア候に連れられて入ったのは、彼の半私室でもある第七作戦室。ここの部屋だけはメインAIに接続されていない完全なスタンドアロン設備で構成されていて、この部屋で行われることは国王にすら情報がいかない。告解室と呼ばれる部屋だ。
「貴方は軍人ではない。そうだね?」
「はい。テガムリア候、あなたがこのドクトルという称号を与えてくださいました」
 この第七作戦室に入ることが出来るのは、持ち主であるテガムリア候を含め、わたしのようにドクトルという称号を頂いたものか、あるいは他の王族の方だけだ。作戦室という名がついているのにもかかわらず、この部屋に軍人は入れない。それは、軍人にはチップが埋め込まれているからだ。
「だが、一つだけ頼みがあるんだ、ドクトル」
 軍人は必ずペアでの行動を義務付けられている。それは互いに互いの行動を監視させ、規律を高めるためと、もう一つ。寝食を共にする仲間がすぐ隣にいて敵と向き合った場合、その者たちは自分のパートナを守るために死に物狂いで戦う。そういう目的で軍人は二人一組での行動を義務付けられている。
 そしてもう一つ軍人に義務付けられているのが、チップの埋め込みだ。このチップは自動で気にその者が所属している部隊属のAIと通信し、作戦行動中に起こったことなどを報告、レポートとして提出する。すべてAIが自動で処理を行うため、兵士の雑務処理がなくなり、彼らは自分の任務により集中できるようになった。
 ただそのチップには問題があり、知られたくないことや秘密にしておきたいことなどもすべて報告としてAIにあがってしまう。そのため、内密な行動をする場合などはチップが邪魔となるのだ。
「貴方は癸六五一二部隊をご存知か?」
「癸、ですか? わたしは丁までしか部隊を知りませんが……」
「あぁ、そうか。貴方は我が軍についてあまり詳しくないんだったか」
 我が国パルテ=ノルテは軍事国家だ。王家の人々はすべてが学者であり、研究者だが、その下に属する平民はすべてが軍人で構成されているといっても過言ではない。このヴォラシダッドから外宇宙へ人を送り込んでいるのも、半分以上が我が国だ。
 ヴォラシダッドにおける宇宙戦略には民間が口を挟む余地はなく、すべてが規律によって定められ、軍によって統制されている。統合的な指揮を執っていらっしゃるのは、パルテ=ノルテ・ワトネッタ候を中心としたヴォラシダッド星各国の王族の方々だ。
「えぇ。申し訳ございません。勉強不足で」
「いや、何も恥じることはない。では少し説明をしようか」
 パルテ=ノルテ国軍でも、テガムリア候の統治するのは乙と丙。総部隊数にして二千を超える部隊の総指揮をとられている。国軍は大きく甲、乙、丙、丁と四つに分かれ、甲はワトネッタ候の直属と、アイレフス候の技術部隊が占める。乙、丙はテガムリア候の戦闘要員で、丁はサッセロフ候が総統なさっている部隊だ。
「甲乙丁の三部隊は対宇宙部隊が九割以上を占めることは知っているな?」
「はい。甲の一部の部隊は宇宙へは出ず、このパルテ=ノルテのアイレフス候の元にいると聞いております」
 テガムリア候の指揮される丙に所属する部隊は、他国からの攻撃を防ぐために地表、本国へ配置されている。ヴォラシダッド内におけるパルテ=ノルテ国領地は決して狭い訳ではないので、国軍の中でも丙に所属する兵士が一番多い。
 甲の中には大きく分けて二つ。対外宇宙作戦の指揮系統に属する兵と、技術工兵とで構成される。技術工兵は全部隊が宇宙へ出ているわけではなく、三分の一程度は地表にいると聞く。その役割としては技術開発であって、わざわざ宇宙に出ずともできる仕事をしているというわけだ。
「そうだな。そこで、癸六五一二部隊だ。癸というのは聞いたことがないと言ったな」
「ええ。国軍は四つに分かれている、という風にしか聞いたことがありません」
 宇宙へ進出する前はもっと細かく分かれ、甲乙丙丁戊己と六以上に分類されていたと歴史の時間に学んだような覚えがある。しかし、宇宙に進出するようになってからは大きな分類で分け、その配下を細かい部隊を作ることで分けているという話だ。
 もしかしたら歴史のどこかには十番目である癸も登場したことがあるのかもしれないが、少なくともわたしの知識の上には存在したことはない。
「癸は一般には公表していない、対捕食者専門部隊所属名だ」
 捕食者。わたしたちと同じ姿をしているにもかかわらず、わたしたちを喰らい、糧とする種族だ。
 古来からこのヴォラシダッドには同じ外見をしているが、性質の異なる二つの種族が存在した。その一つが我々であり、もう一つが捕食者と呼ばれる者たちだ。
 我々のパルテ=ノルテ国は捕食者の生息地域からは遠く、彼らの区域までにはいくつもの国をまたぐために、捕食者の脅威に晒されたことはあまりない。過去に捕食者の軍がその間にある国を滅ぼし、攻めて来たこともあったが、ここまで来るのに疲弊していた捕食者を殲滅するのにそれほど被害を必要とはしなかったそうだ。
「現代にもなって、捕食者が我が国にまで来ることがあるのでしょうか?」
「そういう風に考えるよう仕向けたのが我々だ。実際は捕食者による被害は増えている」
 捕食者は言語を解し、外見も我々と大差ない。つまり、我々を糧とするだけで、他に変わることは一切ない。ただその文明の進化は我々よりも一歩二歩遅れを取っているという話だったが、それも今の話を聞いた後では信憑性に欠ける。
「奴等は狡猾だ。外見面では我々と大差ないことを武器に、我々の社会に紛れ込んできている」
「それを狩るのが、癸……」
 好戦的な種族というのは滅びる存在であると、他の星の生命体が言っていたような気がする。確かに我々は文明が栄えてきた今日であっても、他国に攻め入り、滅ぼそうと躍起だし、捕食種を自己防衛という名目で狩り殺す。一国の中でさえ、王族同士の争いは耐えない世の中だ。このままこんなことを続けていれば、いずれすべてが滅び去っても不思議ではない。
「そうだ。今のところ癸は誰が統治するという決まりがなく、無法状態だ。本来ならば先王ターレソンに属していたのだが、彼が亡き後継ぐ者がいない状態が続いていた」
 先王ターレソン陛下はカリスマ的に軍人から人気のあった王族で、彼の代には二回も隣国との戦争が勃発した。外宇宙への戦略チームに我が国があそこまで顔を利かせているのも、先王の所業があってこそだ。
「しかし癸と言えど、このパルテ=ノルテを守る軍だ。ならば治めて然るべきは私に他なるまい」
「なるほど。ではその癸六五一二部隊というのは?」
 正直わたしは嫌な予感がしていた。わたしはドクトルであって、軍人ではない。ましては王族でもないのだから、このような話を聞かされるということは、確実に隠密役をやらされる。しかし、テガムリア候には恩義があるし、忠誠を誓っている。候が頼むといえば、わたしはどんなことでもするだろう。
「今のところ癸の全部隊はAIが統治統制を執っている。しかし、六五一二部隊だけがそのAIに従わず、クーデターが起きる可能性が出てきた」
「AIに従わない? チップレスの兵ではないのでしょう?」
 チップの入っている兵がAIに従わない場合、AIが上官に報告し、罰則が加えられる。命令違反が続くと極刑に処される場合もあるのだから、クーデターが起こる前にその部隊は全滅してもおかしくはない。
「六五一二部隊の四分の一がチップレス。残りはAIの手を免れる術を見出したらしい」
 四分の一もチップレスだって? それではまるで直属で指揮を執っていた王族がその部隊に所属していたのではないかと思うほどの割合だ。普通は一部隊にチップレスがいたとして一人か二人。多くても二桁にはならないはずだ。
 しかもAIからのアクセス拒否の手段を見つけただなんて、そんな話は聞いたことがない。
「ドクトル。貴方にこの癸六五一二部隊を見てきて欲しいんだ」
 確かにこの任務はわたししか出来ないことだろう。テガムリア候からしてみると、チップレスによって反乱が起きたところへわざわざチップレスを送り込みたくはないのだろうし、だからといって自らで向くことも出来ない。そうなると、ドクトルが出てくるのだけど、相手は軍人とAIだ。その両方を相手に出来るドクトルがテガムリア候の手の内にいるかと訊かれたら、恐らくわたしが筆頭に出るだろう。
「頼めるだろうか?」
「あなたの頼みを断れる者がどこにおられましょうか」
「そう言ってくれると思っていたよ。ドクトル、すまないが今回ばかりは身分を伏せて潜入して欲しい」
 テガムリア候は流石に戦略のエキスパートだけあって、わたしが考えの及ばなかった箇所にまできちんと考えた計画が練られていた。
 そして、わたしはカナエンテ中尉として癸六五一二部隊に潜入することとなった。

TBC...
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